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[読売新聞] 外国人介護職 技能実習制度の利用は慎重に (2016年11月04日)

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介護現場に悪影響をもたらすことはないのか。懸念は拭えない。

介護職への外国人の受け入れ拡大に向けた2法案が、自民、民進など各党の賛成多数で衆院を通過した。今国会で成立する見通しだ。深刻な人手不足を補う狙いがある。

出入国管理・難民認定法改正案では、在留資格に「介護」を加え、留学生が介護福祉士の資格を取得すれば、長期就労を認める。一定の日本語能力や専門知識を持つ人に活躍の道を開くのは妥当だ。

外国人技能実習制度の適正化法案では、賃金未払いなどのトラブル防止のため、実習生の受け入れ団体や企業を指導・監督する機関を新設する。人権侵害があった場合の罰則規定も設ける。

問題は、政府が法施行と同時に対象職種に介護を加える方針であることだ。現在は建設、製造、農漁業などの74職種が対象で、介護が初の対人サービスとなる。

しかし、技能実習制度は、発展途上国の人材に日本の技術を伝えるのが目的である。労働力確保に使うのは筋が違う。

介護サービスの質の低下も懸念される。介護職には、高齢者の状態に応じたきめ細かな対応が求められる。利用者や同僚らとのコミュニケーションも大切だ。

政府は、一定の日本語能力を要件とする方針だが、人材確保を優先してハードルを下げれば、高齢者の安心・安全が脅かされる。

技能実習では、パスポートを取り上げるといった人権侵害や違法な長時間労働が目立つ。「外国人を低賃金で使う制度」との批判が多い。実習生の失踪も後を絶たない。介護の追加は、現状が改善されてからでも遅くはない。

確かに、介護現場の人材難は深刻だ。2025年度には38万人の不足が生じると推計される。

人手不足の主因は、低賃金だ。技能実習の利用は、低賃金の固定化や労働環境の悪化を招く恐れがある。日本人の離職を助長しては本末転倒である。日本人職員の処遇改善こそ優先すべきだろう。

外国人の受け入れには、既にフィリピンなど3か国と結んだ経済連携協定(EPA)の枠組みがある。母国の介護・看護資格などを有する人材が来日している。

だが、原則4年の期限内に介護福祉士の試験に合格できず、帰国する人が多い。資格取得に向けた支援の強化が望まれる。

労働力人口が減少する中、農業など各分野で外国人の活用は大きな課題である。中長期的視野で適正な受け入れ体制を考えたい。

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