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[毎日新聞] 夕張の支援 再建制度の見直しも (2016年11月04日)

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財政破綻した北海道夕張市の再生に向け、国、道、夕張市の3者が再建計画を見直すことで合意した。財政再建一辺倒ではなく、市民負担の軽減や若者の定住促進などの取り組みも実施できるよう転換する。

長期にわたり市民に負担を強いる現行計画は多くのひずみを生んだ。急な人口減少へ対応を迫られる夕張は、今後の地域再生のモデルともなり得る。国は必要な財政支援の枠組みを早期に示すべきだ。

炭鉱閉山で主力産業を失った夕張市は観光振興策の失敗や借金隠しなどで巨額の債務を抱え、破綻した。2007年から国の管理下に置かれ、26年度末まで300億円を超す借金を返済する。

市税の割り増しや、東京23区より広い市域で小学校を1校に統合するような経費圧縮で返済を続けた。だが「最高の負担、最低のサービス」と言われる中で人口減少は加速している。07年に約1万2550人だった人口は9000人を割り、自治体の持続が危ぶまれている。

3者協議では市側の要望を踏まえ、市税を元の水準に引き下げることや、子育て支援や市立診療所の整備など事業規模約100億円の再生策の実施で合意した。財政再建を無理やり進めても、地域が崩壊してしまっては元も子もない。計画の枠組みは維持されるとはいえ、まちづくりに向けたさまざまな施策が認められる意味は大きい。

事業に必要な財源をどう確保していくかが今後の焦点になる。夕張市はふるさと納税の活用などを挙げるが、国や道の支援が欠かせない。赤字の穴埋めに発行した地方債の借り換えによる金利負担の軽減も含め、柔軟に検討すべきだ。

自治体の破綻処理、再建制度を再点検する必要もある。

現在の破綻法制は夕張のように巨額債務を抱えた自治体の再建を想定したものではない。このため約20年がかりで債務を返済させ、国の管理下に置くようないびつな計画を策定せざるを得なかった。

だが、他の市町村に移住せず、破綻した自治体に残って暮らす市民が長期間の負担を強いられるような計画には疑問がある。債務を着実に返還している自治体は国の管理を緩和したり、再建期間に最長で10年程度の期限をつけたりするような制度の見直しも検討すべきではないか。

自治体の財政をめぐり、国は4種類の指標を設け、破綻を未然に防ぐよう求めている。現在、夕張を除き破綻に直面しているような自治体はないが、人口減少が進む中、地方財政の動向は決して楽観できない。特殊な事例だと捉えず、国は夕張の再生に万全を期してほしい。

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