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[日経新聞] 東芝が失った貴重な時間 (2015年11月02日)

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会計操作問題に揺れる東芝が事業の立て直しに着手した。9月末に発足した室町正志社長率いる新経営陣は、手始めに半導体事業の一部譲渡や拠点の集約などを発表した。今後は家電事業などにもメスを入れる方針だが、競合会社に比べて事業の再構築で大きな後れをとったのは間違いない。

会計上の利益操作を続けて、事業の実態を直視してこなかったツケである。

半導体のリストラは「システムLSI」と呼ばれる事業分野を中心に実施する。目玉はスマートフォンなどに搭載される画像半導体の生産設備のソニーへの売却だ。関連する技術者ら1100人もソニーに移籍する見通しで、かなりの規模の合理化になる。

そのほか白色発光ダイオードからの撤退や拠点統合、希望退職も実施し、赤字の止血をめざす。

それに続くのがテレビやパソコン事業のリストラだ。室町社長は両事業について「11月初旬に方向性を出したい」と述べた。テレビとパソコン事業は過去6年あまりで計640億円弱の利益を水増ししてきただけに、抜本的な改革が不可避とみられる。

半導体やテレビは、国内工場の老朽化やアジア企業の追い上げといった構造的な問題があり、東芝以外の電機大手にとっても悩みのタネだったのは事実だ。

だが他社は早めに手を打った。東芝の最大のライバルである日立製作所はリーマン・ショック後の2009年にテレビからの撤退を決め、システムLSIもNECなどとの事業統合を通じて、外部に切り出した。

こうして不採算ビジネスを整理する一方、発電設備や鉄道などのインフラ事業を強化し、同社の業績は急回復した。

この間、東芝は利益操作で自らの実態を偽り、貴重な時間を浪費した。病気の治療と同じく企業のリストラも手遅れはときに致命的である。新経営陣はこうした危機意識を持って、背水の陣で企業再生にあたってほしい。

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