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[東京新聞] 人民元の国際化 もう一段の改革努力を (2015年12月02日)

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中国の人民元が国際通貨基金(IMF)の主要通貨に認められたのは改革努力が一定の評価を受けたためだ。だが、まだ不十分だ。責任ある運営を促していくことが国際社会にとっても利益になる。

通貨危機などに備えてIMFが加盟国に割り当てる「特別引き出し権(SDR)」の構成通貨に、人民元を来年十月から加えることをIMF理事会が承認した。元を米ドル、ユーロに次ぐ第三の通貨と位置付けた。四、五番目の円、英ポンドよりも上位である。

世界第二の経済大国となった中国が、これまで米日欧が主導してきた国際金融の世界でも一段と影響力を増すことが想像できる。

五年に一度、見直されるSDRの構成通貨に入るには、二つの重要な基準がある。一つは貿易で輸出額が多い国の通貨であること、そして規制が少なく国際的に自由に取引できる通貨であることだ。

前回二〇一〇年の見直し時で中国はすでに日本の輸出規模を上回っていた。しかし、さまざまな取引規制や中国政府による市場介入などが問題視されて、採用が見送られたのである。

その後、中国は元の自由度を高める改革に取り組んできた。八月に人民元の為替レートをより市場実勢に委ねる方針に転換し、十月にはロンドンで人民元建ての債券を発行するなど取引の選択肢を広げた。こうした改革努力により採用基準を満たしたと判断された。

今回の人民元のSDR採用をめぐっては各国間の思惑が交錯した。米国は中国政府が人民元安を誘導して輸出拡大を図っていると指摘、日本も円の存在感低下を懸念し、安全保障面も含めて中国の影響力増大を警戒する日米は採用に慎重姿勢を示した。

一方、中国が主導して年内に設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)へ参加するなど中国との経済関係を重視する欧州勢は採用を支持した。中国や新興国の発言力を高めるIMF改革(出資比率見直し)が米国の反対で停滞する問題も、採用を後押しした。

とはいえ、人民元の改革はまだ不十分との見方は共通する。銀行などの売買で相場が決まるドルや円などと違い、中国当局が介入して相場変動を一定範囲に収める事実上の「固定相場制」なのが最大の問題だ。

中国を国際金融秩序に組み入れ取引の規制緩和を促していく。主要通貨としての責任を果たすよう後押しすることこそ日米を含む国際社会にとって意義ある対応だ。

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