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[日経新聞] 国民の理解得て「日本型テロ対策」徹底を (2015年12月09日)

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パリ同時テロを受け、政府がテロ対策の強化を打ち出した。テロ情報の収集・分析や空港での水際対策を拡充していく。8日には外務省や警察庁などから専門家を集め、関連情報を一元的に集約する「国際テロ情報収集ユニット」を同省に新設した。

過激派組織「イスラム国」(IS)などによるテロの脅威は世界中に拡散している。日本にとって決して対岸の火事ではない。いまある仕組みを最大限磨き上げ、守りを固める必要がある。

実効性のあるテロ対策のためには国民の理解が欠かせない。対策の意味や効果を説明し、事業者や市民が自発的に協力しようと思える環境をつくることが重要だ。

官民一体で取り組むべきテロ対策の象徴が「ソフトターゲット」と呼ばれる商業施設やテーマパークなどでの警戒、警備だ。

数が多く、不特定多数の人が集まるため、警察による対応には限界がある。情勢に応じて、管理者に自主警備の強化や防犯カメラの設置、手荷物検査などに取り組んでもらわなければならない。

日本は銃規制は厳しいが、日常的に流通する化学物質で製造できる爆発物がテロ行為に使われる懸念がある。この分野でも原料物質を販売する業者と警察が協力し、購入者の本人確認をしたり、不審な行動があれば通報したりといった取り組みの徹底が求められる。

政府や警察による規制や命令だけで一方的に進めるのではなく、民間の側も当事者意識を持って対応にあたることが、テロに強い社会づくりにつながる。官民が協調する日本型のテロ対策を着実に進めていきたい。

テロ対策では「情報」がカギを握る。水際でテロにかかわる人物をチェックしようにも、対照するデータがなければ最新のシステムも絵に描いた餅にすぎない。

新設された国際テロ情報収集ユニットは、省庁を横断して情報を収集・分析する仕組みとして評価できる。だが主要国にある本格的な情報機関と比べれば、要員も情報収集の手段も乏しい。

また欧米では不審な人物の行動把握に、裁判所の令状を必要とせずに通話やメールを傍受する手法が広く採用されているが、日本にはこうした制度自体存在しない。

国民の理解を得ながら対策を進める一方、日本が今後とるべきテロ対策のあり方について議論を深めていく必要があるだろう。

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