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[朝日新聞] 銀行ローン 過剰融資に踏み込むな (2017年04月25日)

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銀行が無担保で個人にお金を貸す「カードローン」が急増している。返しきれないような過剰融資を防ぐため、銀行と金融庁は実態の把握を急ぎ、実効的な対策をとるべきだ。

個人向けの無担保ローンではかつて、消費者金融による多重債務が社会問題になった。利息の高いお金を借り、それを返すためにまた借金を重ねて、生活が行き詰まる人が続出。自殺の原因にもなっていた。

対策として消費者金融などに適用される貸金業法が改正された。年20%超の「グレーゾーン」金利が撤廃され、合計で年収の3分の1を超える貸し出しを原則禁止する「総量規制」も導入された。その後、消費者金融の貸付残高は急減している。

一方、銀行のカードローンはこの4年で2兆円増の5・4兆円にまで増え、消費者金融を上回った。背景には、日銀の低金利政策により、従来の貸し出しや運用では、利ざやをとりにくくなったことがある。

見逃せないのが、銀行は貸金業法ではなく銀行法が適用されるため、総量規制の対象外であることだ。朝日新聞が全国の銀行120行に書面でアンケートしたところ、回答した101行の大半が年収の3分の1を超える貸し付けをしていた。

銀行カードローンが自己破産につながった実例もある。消費者金融がカードローンの「保証人」になって、貸し出しに関わっていることも多く、総量規制の抜け穴になっているとの指摘もある。日本弁護士連合会は、銀行も総量規制の対象にするよう金融庁に求めている。

これを受けて全国銀行協会は3月、カードローンの広告・宣伝で、「総量規制の対象外」と強調しないことや、審査態勢の整備などを打ち出した。

だが、銀行以外が運営している比較サイトでは、銀行は総量規制対象外との表現が目立つ。銀行自身のサイトも、依然、ウェブだけで申し込めることや、銀行だから「金利も安心」といった「借りやすさ」を前面に出した内容が大半だ。

個人が一時的に無担保での借り入れを必要とすることはある。年収の3分の1を超えても返済できて、生活が助かる場合もあるかもしれない。

しかし、朝日新聞のアンケートでは、年収の3分の1超の貸し付けに消費者の利便性があるかとの問いに、明確に答えられない銀行が半数近かった。銀行の利益だけを念頭に置くのなら、消費者金融と別扱いにする理由は薄れる。銀行業界はそのことを自覚するべきだ。

[読売新聞] 原発新検査制度 より重くなる電力会社の責任 (2017年04月25日)

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原子力発電所の安全性向上へ、電力会社の自主的な取り組みを後押しする検査制度にしたい。

今国会で成立した改正原子炉等規制法は、原子力規制委員会に、検査制度の抜本改革を課している。

高水準とされる米国の検査制度の導入が念頭にある。

米国の原発は、高い安全性を誇る。トラブルが少ないため、稼働率も90%前後と高い。現場の実情に応じた柔軟な検査制度の導入が奏功した、と言われる。

日本の制度はかねて、硬直化が指摘されてきた。

その典型が、原発を停止させて実施する13か月に1回の定期検査と、年4回の保安検査だ。原子力規制庁が予(あらかじ)め、検査リストを電力会社に示す。設備の検査に、規制庁が直接携わることもある。

この方式では、リストにない項目の安全確保は、疎(おろそ)かになりがちだ。東京電力福島第一原発事故では、重大事故に備えた圧力降下用の弁などの不備を見抜けず、放射能の大量放出につながった。

今後、各地で原発の再稼働が続くだろう。事故の教訓を新たな検査制度に生かすべきだ。

新制度では、電力会社が主体となって、日常的な設備検査を実施する。規制庁は、保守点検体制の監視に注力する。必要に応じて、抜き打ち調査も実施する。

異常を見逃していないか。異常を検知した時の対応は的確か。原発で働く人たちの意識が、総合的に評価されることになる。

規律の緩みを見逃さないよう、検査する側の力量も問われる。監視項目にはメリハリを付けたい。安全の根幹に関わらない細部に拘泥していては、検査が長期化し、現場の意欲も低下する。

米国でも、1979年のスリーマイル島原発事故を受けて、当局が検査を硬直化させた。それに伴い、稼働率が低下した。

改革が進んだ現在では、取り組みが良好と認められた原発は、点検を効率化できる仕組みに改善されている。定期検査の頻度も減らせるようになった。

検査結果に基づき、各原発の評価内容は公表され、安全性がランク付けされている。

同様の仕組みの導入に向けて、規制委は、米国の検査現場に職員を派遣している。これを基に、日本に適した制度を練り上げる。検査官も増員して、2020年度には運用を開始する方針だ。

原発の安全性向上が、有効活用につながる。質の高い検査制度を目指さねばならない。

[朝日新聞] 仏大統領選挙 国際協調の針路を問え (2017年04月25日)

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国際社会と協調して繁栄を目指すのか。それとも自国第一主義を掲げて国を閉じるのか。

フランス大統領選挙は、グローバル化時代の国の針路を問う選択になりそうだ。

前者を訴えるのが中道・独立系のエマニュエル・マクロン氏。後者が右翼・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首である。

5月7日の決選投票は、正反対の立場をとるこの2人によって競われる。

いずれの道も利点と欠点があろう。しかし、グローバル化はもはや押しとどめがたい世界の現実だ。多くの先進国が直面する共通の課題だからこそ、この時代をどう生き抜けばいいか、突っ込んだ論戦を望む。

両者の違いは、国境の壁をなくして人や物の往来を促してきた欧州連合(EU)への態度とも重なり合う。

親EU派のマクロン氏は、伝統産業が他国に移転したり、移民や難民が急激に流入したりする現実に対する人々の不満と不安の声にこたえてほしい。

一方、反EUを説くルペン氏は、経済問題や難民危機のように一国では解決できない課題にどう取り組むのか、明確な説明を果たす責任がある。

長年、交代で政権を担ってきた左右の2大政党の候補が、ともに決選投票への進出を逃したのも異例の事態である。

「成長重視の右派、分配重視の左派」という古い対立軸から抜け出せず、グローバル化時代への処方箋(せん)を示しきれない大政党の限界が露呈した。

公金流用疑惑など候補の金銭スキャンダルも浮上。「反エリート」を掲げるルペン氏、「右でも左でもない」が売り物のマクロン氏への追い風になった。

既得権に安住し、庶民の声に耳を傾ける努力を怠ってきた2大政党は、今回の敗北を真摯(しんし)に反省して出直すべきだ。

02年に国民戦線が決選投票に進んだ時は、ほぼ全ての政治勢力が「反右翼」の包囲網を敷いて当選を阻んだ。

だが、今回も同じ手法が通用するかは疑問だ。

たしかに移民規制などルペン氏の排外的な公約には懸念すべき点が少なくない。

とはいえ、国民戦線がグローバル化を不安視する層の受け皿になっていることも否定しがたい現実である。

むしろマクロン氏がなすべきは、EUという国際協調の取り組みが、いかに平和と経済発展をもたらしてきたか、丁寧に説明を尽くすことだろう。それこそポピュリズム(大衆迎合)を封じる唯一の道でもある。

[読売新聞] 仏大統領選 社会の疲弊と分断を露呈した (2017年04月25日)

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長引く経済低迷に疲弊し、繰り返されるテロの傷痕は深刻だ。そんな厳しいフランス社会の状況が浮き彫りになった。

仏大統領選の第1回投票が行われ、中道で無所属のマクロン前経済相が首位に立った。極右・国民戦線のルペン党首は僅差で2位につけた。

上位2人を含む候補者4人がほぼ横一線の激戦となった。どの候補者も過半数を獲得できなかったことから、この上位2人が5月7日の決選投票に臨む。

今回の選挙は、フランス政治の重要な転換点と言えよう。

これまで交互に政権を担ってきた中道右派と中道左派の既成政党の候補はそろって、決選に進めなかった。現在の選挙制度が実施された1965年以来初めてだ。

欧州連合(EU)の要であるフランスで、「反EU」対「EU重視」が争点となった。EU統合推進の是非を巡って国民の分断が進行していることの表れだろう。

ルペン氏と、急進左派のメランション氏は、EUが低所得層を中心に国民生活を圧迫しているという主張では軌を一にし、離脱の是非を問う国民投票を提唱した。

半世紀以上、EUの屋台骨を支えてきた既成政党の凋(ちょう)落(らく)の背景には、近年、フランスが直面する険しい現実がある。

ギリシャに端を発した欧州財政・金融危機で、EU主導の緊縮財政を強いられ、失業率は10%前後で高止まりしている。

2015年のパリでの大規模テロ以来、非常事態宣言が出されたままだ。イスラム過激派の暴力は根絶できていない。投票日直前には、首都のシャンゼリゼ通りで警察官射殺事件が発生した。

テロ犯はフランスなどで育った移民系の若者が多い。15年には、中東から欧州へ大量の難民が流入した。移民や難民が治安を悪化させたという国民の不満が、排外主義の台頭を招いたのは明白だ。

オランド政権与党である中道左派・社会党は不人気に陥った。

大統領選は当初、中道右派・共和党のフィヨン氏が本命視されていた。だが、家族を架空雇用したとの公金横領疑惑で失速した。カネ絡みの醜聞が絶えないことも、既成政党不信に拍車をかけた。

既成政党に所属しないマクロン氏は、39歳という若さと清新なイメージを武器に、選挙戦を優位に戦おうとしている。

欧州の政治・社会を確実に混乱させるルペン氏の当選を阻めるのか。マクロン氏を軸にしたEU重視勢力の結集が欠かせまい。

[日経新聞] 「常識を越す万博」に肉付けを (2017年04月25日)

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政府は博覧会国際事務局(BIE)に2025年国際博覧会(万博)の大阪招致を申請、すでに立候補しているフランス・パリとの招致レースが本格的に始まる。開催地は18年11月のBIE総会で、加盟国の投票によって決まる。

政府や大阪府がまとめた計画によると、万博は大阪市の人工島、夢洲を舞台に25年5月から半年間開催する。期間中に最大3000万人の入場者を見込んでいる。

万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。人工知能(AI)や仮想現実(VR)など先端技術の実験場にする計画だ。

実現すれば、地盤沈下が指摘される関西や大阪の経済活性化に大きく役立つだろう。最近、アジアからの観光客などでにぎわう大阪に新たな魅力が加わり、長年の懸案だった大阪湾岸の開発にも弾みがつくことになる。

前回、大阪万博が開かれたのは高度経済成長期の1970年だ。当時と今では社会の姿はもとより、国民の未来に対する考え方も大きく変わっている。

経済産業省の有識者検討会は大阪万博の方向性のひとつとして「常識を越えた万博」を掲げている。招致に向けた国民の機運を高めるためにも、その具体的な姿を早く肉付けすべきだろう。

地元経済界では万博招致を支持する意見が多い一方で、資金負担を懸念する声も少なくない。魅力的な万博の姿を官民が協力して描く必要がある。

大阪府や大阪市は夢洲をカジノを含む統合型リゾート(IR)の候補地にもしている。カジノに対してはギャンブル依存症の増加や反社会的勢力の介入など様々な負の側面が指摘されている。万博とカジノは別問題ととらえたい。

市はIRや万博に向けて夢洲に地下鉄を延伸する予定だ。会場建設費に加えてこうした関連事業の費用もかさむ。

万博の招致が財政面で府や市の重荷になっては困る。中長期的な財政見通しも改めて明らかにしてほしい。

[日経新聞] 仏国民は開かれた経済・社会を守れるか (2017年04月25日)

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フランス大統領選挙の第1回投票で独立系中道候補のマクロン元経済産業デジタル相と、極右政党、国民戦線(FN)のルペン党首が1位と2位になり、5月7日の決選投票への進出を決めた。

反欧州連合(EU)を掲げる候補者同士による決選という展開は回避され、親EUで穏健な政策を説くマクロン氏が当選に向け前進した。ポピュリズム的な政治潮流が欧州で止まる節目となるか、仏国民の選択が問われる。

マクロン氏は39歳と若く、主要政党に属さない清新なイメージなどで中道層を中心に支持を集めたようだ。ルペン氏はトランプ米大統領のように自国第一主義を前面に出し、ユーロ圏からの離脱や移民制限といった内向きな政策で現状に不満を持つ層を取り込んだ。

ルペン氏が当選すれば、ドイツとともに欧州統合の中核を担ってきたフランスで反EUの大統領が誕生し、欧州に与える打撃ははかりしれない。保護主義的政策で世界を揺さぶることも予想される。

ルペン氏の党からは2002年の大統領選でも同氏の父が決選投票に進んだが、右派と左派の主要政党が結束して当選を阻んだ。今回も第1回投票で敗れた共和党と社会党の候補がマクロン氏支持を表明するなど、主流派の政党は反ルペンを訴えていく見通しだ。

目を引くのは、これら2大政党の候補者がいずれも決選投票に進めなかったことだ。

フランスの大統領選で極めて異例の事態は、既成の主要政党への批判が根強いことを示す。社会党から票が流れたとみられる急進左派のメランション氏がルペン氏とともに勝ち進み、反EUの候補者同士の対決になることも懸念されていた。

決選投票では、こうした主要政党への不満票がルペン氏にどれだけ向かうかがカギを握りそうだ。

マクロン氏が制すれば、欧州統合を推進するとともに、国内の経済改革で競争力強化をめざすことが見込まれる。

欧州では6月の英総選挙、9月のドイツ総選挙と、重要な選挙が続く。英国のEU離脱交渉もこれから始まる。フランスが次の大統領のもとで過激で内向きな路線にかじを切れば、欧州は深刻な混乱に陥りかねない。

EUとグローバル化を重視する現実的な道をフランスは堅持してもらいたい。有権者の冷静な判断が期待される。

[毎日新聞] ルペン氏2位の仏大統領選 決選へ世界の注目は続く (2017年04月25日)

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フランス大統領選は第1回投票で中道・独立系のマクロン前経済相が1位、極右・国民戦線のルペン党首が2位となった。しかし、いずれも過半数に達しなかったため、5月7日の決選投票に持ち込まれた。

反欧州連合(EU)、反移民、反イスラムを掲げるルペン氏に、一時期の世論調査が示した勢いは見られなかった。だが、5年前に続く2度目の出馬で初めて決選にこぎつけた。得票率は前回を上回った。

2位にとどまったのは、極右の台頭を警戒する仏社会の空気がある程度作用したためだろう。国際社会にとって当面の安心材料にはなる。

国民戦線はルペン氏の父ジャンマリ氏の代に強硬な排外主義を唱えた。ルペン氏が党首になり、ややソフト路線に転じたが、今回も「フランス第一主義」を掲げ、EUからの離脱のほか、保護主義的な貿易、極端な移民の流入制限を訴える。

フランスはドイツとともにEUの中核である。ルペン氏が大統領になれば、フランスはEUに背を向け、欧州は統合から分断へ転じかねない。英国のEU離脱の動きに輪をかけて、欧州は混乱に陥るだろう。

首位に立った39歳のマクロン氏は「右でも左でもない」を旗印とする。オランド政権の閣僚だったため社会党寄りとみられていたが、超党派を掲げて出馬した。

選挙では社会、共和の2大政党が初めて、ともに決選投票へ進めず、既存政党への不信があらわになった。共和党のフィヨン元首相は妻らの不正給与疑惑が響いた。

マクロン氏は既存政党に属さないことが功を奏した。EUの統合推進、自由貿易、移民受け入れなど穏健策を掲げるため、浮動層らの反ルペン票を取り込んだともいえる。

敗れた2大政党の候補はマクロン氏への支持を表明した。ただし、これでマクロン氏優位が確定するわけではない。

トランプ米大統領の当選時と同様に、「自国第一主義」などへの隠れた支持があるかもしれないからだ。

決選投票ではEUとの関係や、グローバリズムの是非など争点が絞られてくるだろう。

しかも、結果は6月の英総選挙、秋の独総選挙にも影響を与える。引き続き注視が必要だ。

[毎日新聞] 動きが急な北朝鮮情勢 日本の外交力が問われる (2017年04月25日)

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安倍晋三首相とトランプ米大統領が電話で協議し、核実験の準備や弾道ミサイル発射を続ける北朝鮮に自制を求めていくことで一致した。両首脳の電話協議は今月だけで3回も行われる慌ただしさだ。

北朝鮮はきょう朝鮮人民軍創建85周年を迎えた。その節目を前にしたタイミングである。6回目の核実験やさらなる弾道ミサイル発射を警戒する日米が緊密な連携をアピールする目的があったとみられる。

中国がより大きな役割を果たすべきだとの認識も共有した。北朝鮮の挑発行為をやめさせるには、経済的に影響力を持つ中国が強い態度で臨む必要があるという判断からだ。

トランプ大統領は安倍首相に続いて習近平・中国国家主席とも電話協議した。習主席は関係国の抑制的な対応を求めると共に、北朝鮮を念頭に国連安全保障理事会決議への違反行為に強く反対する意向を伝えた。

日米は西太平洋上で米原子力空母「カール・ビンソン」と海上自衛隊のイージス艦などが参加した共同訓練を始めた。米国は北朝鮮のテロ支援国家再指定も検討している。

核実験を阻止したい中国も北朝鮮産石炭の禁輸措置徹底など厳しい態度を示している。中国は北朝鮮にとって死活的な石油を供給している。

しかし、北朝鮮問題を巡る経過を振り返れば、北朝鮮が核・ミサイルを放棄するかは不透明だ。北朝鮮が軟化しなければ緊迫の度合いはより高まると懸念される。

日本国内ではミサイル攻撃を受けた際の避難方法を紹介した政府の「国民保護ポータルサイト」へのアクセス数が急増し、在韓邦人の保護など具体的な準備も進めている。

その備えと同時に有事に至らぬよう外交努力を尽くす局面だ。安倍首相は近く訪露する。米露関係が悪化するなかプーチン大統領に北朝鮮包囲網に加わるよう直言すべきだ。

北朝鮮問題は東アジアの平和と安全に深く関わる。日中韓の連携は不可欠だが、日本と中国や韓国とのパイプは乏しい。いざという事態での意思疎通が十分か、不安が残る。

国連では北朝鮮を巡る安保理閣僚級会合が近く米国で開かれる。米国との連携は重要だが、ロシアや中韓などとの間で独自外交を展開できるか。日本の外交力が試される。

[産経新聞] 【主張】仏大統領選 統合の理念を再認識せよ (2017年04月25日)

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フランス大統領選で、極右「国民戦線」のルペン党首と中道・独立系のマクロン前経済相が決選投票に進んだ。

マクロン氏が欧州連合(EU)を重視しているのに対し、ルペン氏は公約で離脱を問う国民投票の実施を掲げている。

フランスはドイツとともに欧州統合の両輪である。大陸欧州の2大国が牽引(けんいん)したのは、戦争の悲劇を二度と繰り返さないという、統合の理念そのものだったのではないのか。

結果次第でEU崩壊への引き金が引かれる大統領選の行方を、注視しなければならない。

英国がEU離脱を決め、「米国第一」のトランプ米政権が誕生した。欧州各国でも「自国第一」を唱える大衆迎合主義的、排他主義的政治勢力が台頭している。

フランスでも、ルペン氏に加えて、急進左派候補が反EUを掲げて一時、支持を急伸させた。ただ、最終的にはマクロン氏が上位2人のうちの1人に勝ち残ったため、反EU同士の決選投票は回避された。

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3月のオランダ下院選では、EUを支持する与党が辛勝した。欧州各国で、EU支持派が辛うじて踏みとどまる流れを、つなげられるかどうかが問われよう。

ルペン氏は移民の入国制限を掲げるなど、反イスラム、自国第一主義の政策を打ち出す。国内産業・雇用の優先など経済的には保護主義の色彩が濃い。

マクロン氏は、オランド大統領の下で経済相を務めた。ユーロ圏予算の創設やEUの防衛協力強化など、欧州全体を視野に入れた戦略を描いている。

決選投票に向けて、EUにとどまることの意味合いを、よりていねいに語ることが必要である。

フランスはドイツとともにEUの核となってきた。ロシアや中国などを相手にする場合でも、EUの結束と影響力行使に欠かせない存在だ。安全保障の観点からも、国際秩序の維持に大きな役割を果たすべき立場だ。

今回の大統領選の特徴として、二大政党である社会、共和両党の候補が、いずれも決選投票へ駒を進められなかった点がある。既存政治への不満である。移民問題を含め、極論に走らず冷静に議論することこそ重要だろう。

テロが相次ぎ、非常事態宣言下での選挙となったが、民主主義の維持へ賢明な選択を求めたい。

[産経新聞] 【主張】大阪万博の誘致 まず夢ある世界像を語れ (2017年04月25日)

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2025年国際博覧会(万博)の誘致に向け、大阪府などがパリの博覧会国際事務局(BIE)に対し、正式立候補を表明する文書の届け出にこぎつけた。

だが、万博を通していったい何を世界にアピールしたいのか。開催意義や構想を置き去りにして、再び夢を見たいという漠然とした考えだけなら、「立候補ありき」と呼ばれよう。

3年前、大阪府の松井一郎知事が、2度目の東京五輪を開くなら大阪万博も、という発想から動き出した。

府が昨年まとめた基本構想は当初、「人類の健康・長寿への挑戦」をテーマに掲げた。大阪の笑いの文化は健康によいなどと、おおざっぱでこじつけめいた「構想」もあった。

政府の有識者検討会を経て、テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」と広げられた。さらに総花的になっていないか。

立候補に至る過程では、松井知事が代表を務める日本維新の会と安倍晋三政権が、良好な関係を保つツールとして万博を取り上げている印象も受けた。内容は後付けで、という程度の発想では、国民の共感など得られまい。

万博会場に想定されている大阪湾の人工島、夢洲(ゆめしま)は、大阪五輪の選手村などを目指したが実現しなかった。これを「負の遺産」にしたくないための万博誘致という意図も透けて見える。

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暴力や食糧不足など、困難な課題の残る世界で、科学先進国である日本が貢献できるのは何か。和を重んじる日本の精神は、異なる生き方を提案する。夢のある世界像を描き、来年秋の投票までに強く発信したい。

関西には、世界の観光客を引き付ける豊かな歴史がある。日本の治安のよさは海外でも評価されている。こうした長所をアピールすることも重要だろう。

誘致委員会のトップには榊原定征経団連会長が就いたが、肝心の関西財界の一部には、経済的負担を理由に消極性もうかがえる。誘致の実現へ一丸となれるのか。

賽(さい)は投げられた。東京五輪後の経済対策としても、万博の誘致、開催はあり得る策だ。魅力ある具体像を煮詰め、誘致ムードを高めることに努めてほしい。

25年万博には、すでにフランスが立候補している。強力なライバルである。

[東京新聞] カジノ解禁法 本当に合法なのですか (2017年04月25日)

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賭博は古くからご法度だった。例外的に競馬などの公営ギャンブルが認められているが、カジノは初の“民間賭博”だ。本当に合法なのか不明だ。治安悪化などもっと負の面を検証すべきだ。

自分で稼いだカネを博打(ばくち)で使って何が悪い。全部すってしまっても自己責任だから仕方がない。そう考える人もいるかもしれない。

しかし、賭博は勤労によらないでカネを得ようとするから、必然的に勤労の美風を害する。副次的に犯罪も誘発する。社会の風俗も害するから、近代法の世界では賭博罪をもって処断するのである。

「統合型リゾート施設(IR)」整備推進法(カジノ解禁法)は昨年十二月、国会会期を再延長してまで審議を強引に進め成立した。現在はIR整備に向けた推進本部で制度づくりの検討が進められている。同時に秋に見込まれる臨時国会に向けて実施法案の提出を目指し、夏ごろまでにその大枠をまとめる方針だという。

安倍晋三首相は同本部の初会合で「世界最高水準のカジノ規制を導入し、依存症などにも万全な対策を講じて、クリーンな日本型IRをつくり上げる」と述べた。世界最高水準のカジノ規制、クリーンなIR…。ほとんど意味がつかめない言葉づかいである。

最も疑問なのが、カジノが違法にならないかという点だ。競馬や競輪などは、目的の公益性、例えば収益の使途を公益性のあるものに限ること。運営主体を官またはそれに準じる団体に限るなど、いくつものハードルを設けている。

カジノについては、観光振興で、収入を公益目的に還元する程度しか伝えられていない。現行の刑法が賭博として禁じているカジノを、そもそも合法化していいのか、根本的な論理が欠けている。

共同通信社が昨年十二月、IR整備推進法の成立直後に実施した世論調査では、カジノ解禁に69%が「反対」だった。

経済効果を政府は宣伝するが、そんなにうまく事は運ぶのだろうか。ギャンブル依存症、マネーロンダリング(資金洗浄)の問題、反社会的勢力の関与や青少年への悪影響など一筋縄ではいかない問題が潜んでいることを国民は感じているのではないか。

そもそも賭博禁止の歴史は古い。七世紀の持統天皇の「すごろく禁止令」から実に千三百年以上の歴史を持つともいわれる。どの時代でも賭博は暗部の世界である。美風を損なう法には反対だ。

[東京新聞] 仏大統領選 EUは警鐘ととらえよ (2017年04月25日)

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仏大統領選で超党派のマクロン前経済相(39)と極右・国民戦線のルペン党首(48)で争う決選投票はEUとの関係が最大の争点となる。欧州の将来を左右する岐路であり、EUも変革を迫られている。

今回の第一回投票の特徴は、保革の二大政党の候補者がそろって決選投票に進めなかったことだ。一九五八年に現体制の第五共和制に移行して以来、初めてである。

若者の失業率の高止まりなど経済の低迷やテロ対策の不十分さが指摘されたが、従来の保革対立の構図が時代に対応できていないのが実態だろう。資本対労働という階級闘争の歴史を引きずり、グローバル時代の変化に富み複雑多様化する民意をくみ取れていないということだ。

それは米大統領選でのトランプ氏の勝利や英国のEU離脱の経緯と重なるのである。安い移民の労働力に職を奪われたり価格競争の末に廃業に追い込まれるなどグローバル化に「取り残された人々」は反EU、反自由貿易、移民排斥を掲げたルペン氏を支持した。

フランスもまたパリから少し離れれば、トランプ氏に期待を寄せたラストベルト(錆(さ)びついた地域)のような失業や景気低迷にあえぐ地域が少なくないのである。既存の大政党やEUのエリート官僚、富裕層などを攻撃するルペン氏の手法は、英米の反乱劇のデジャビュ(既視現象)を感じさせた。

手厚い社会保障などを訴え、選挙戦終盤に急浮上した極左のメランション氏は、行き場を失った若者らの受け皿となって旋風を起こした米国の「サンダース現象」をほうふつとさせた。こうした社会の地殻変動や国民の分断はもはや英米仏だけのものではなく、先進各国に通底する課題になりつつあるとみるべきだろう。

国際政治においてグローバル化と国家主権、民主主義の三つは同時に成り立たないトリレンマ(三律背反)といわれる。とりわけ超国家連合体であるEUは、国家主権との相克が起こりがちなのだ。

焦点は親EUを掲げ右派から左派まで幅広い支持を目指すマクロン氏が優勢を守れるかだ。だが第一回投票で反EU票は合計で50%近くに達したもようだ。再びテロの脅威が高まればルペン氏に追い風との見方も根強く、予断を許さない。

中核国フランスが離脱となればEUは瓦解(がかい)の道を歩むだろう。EUは、なぜこれほど反EUの声が強いのかを警鐘と受け止め、早急に変革の姿を示すべきである。

[読売新聞] 辺野古護岸工事 「普天間」返還へ重要な一歩だ (2017年04月26日)

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長年の課題である米軍普天間飛行場の返還の実現に向けて、重要な節目を迎えたと言えよう。

政府が、飛行場の移設先の沖縄県名護市辺野古で、埋め立て区域を囲む護岸堤防の建設に着手した。

普天間飛行場返還の日米合意から21年を経て、代替施設の埋め立て工事がようやく本格化する。

菅官房長官は、「多くの人々が望んできた全面返還を実現する確かな一歩だ」と強調した。

工事が順調に進めば、代替施設は5年程度で完成する。政府は、早ければ2022年度の普天間飛行場の返還を目指す。

辺野古移設は普天間問題の唯一の現実的な解決策だ。多くの地元住民も条件付きで容認している。着実に作業を進めるべきだ。

政府は、3月末で期限が切れた県の岩礁破砕許可を更新せずに工事を続け、県は「無許可工事」と主張する。だが、破砕許可の前提となる漁業権を地元漁協が放棄した以上、許可の更新は不要だ、との政府の判断はうなずける。

沖縄県の翁長雄志知事は、護岸工事を「サンゴ礁など環境保全の重要性を無視した暴挙」と批判した。「あらゆる手法を行使し、新基地を造らせない」とも語る。

辺野古移設は、市街地の中心にある普天間飛行場の危険性や周辺住民の騒音被害を除去する意義を持つ。海兵隊の安定駐留を続ける安全保障面の重要性も大きい。

政府は、これらの点について丁寧な説明を尽くすとともに、移設先の環境への影響を最小限に抑える努力を続けることが大切だ。

疑問なのは、翁長氏が、新たな工事差し止め訴訟の提起や、仲井真弘多前知事による埋め立て承認の「撤回」に言及したことだ。

埋め立てを巡っては、15年10月の翁長氏の一方的な承認「取り消し」が、昨年12月、最高裁で「違法」と認定されている。

知事が埋め立て承認を撤回した前例はない。確たる法的根拠がないままの撤回は権限の乱用だ。

政府と県は昨年3月の和解により、「確定判決に従い、互いに協力して誠実に対応する」と確約している。翁長氏の言動はこの条項にも反するのではないか。

うるま市長選では、保守系の現職が3選した。県内の市長選では昨年1月の宜野湾市長選以降、翁長氏が推し、辺野古移設に反対する候補は4連敗となった。

翁長氏の求心力低下を象徴するだけでなく、「オール沖縄が辺野古移設に反対している」との持論の破綻を意味しよう。

[読売新聞] 朝鮮半島情勢 圧力強化は軍事・外交両面で (2017年04月26日)

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北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対処するには、米国など関係国が軍事、外交両面で総合的に圧力を強めねばならない。

北朝鮮が米国に対抗する言動をエスカレートさせ、情勢を一層緊迫させている。

「軍創建85年」に当たる25日、長距離砲などによる大規模な火力訓練を実施したとされる。朝鮮労働党機関紙は、米韓が軍事行動を図れば、「最も凄絶(せいぜつ)な懲罰の先制攻撃を加える」と喧伝(けんでん)した。

今月末まで続く米韓合同軍事演習に反発する北朝鮮が、核実験や弾道ミサイル発射を強行する可能性がある。警戒を怠れまい。

安倍首相は24日のトランプ米大統領との電話会談で、「全ての選択肢がテーブルの上にあることを示す姿勢を高く評価する」と改めて強調した。電話協議は今月3回目だ。このタイミングで緊密な連携を打ち出した意義は大きい。

日米両政府は、西太平洋で実施した海上自衛隊と米海軍の共同訓練を、日本海でも行う方針だ。米原子力空母「カール・ビンソン」と海自の護衛艦2隻などが陣形を変えながら航行する。

空母が参加する共同訓練を日本海で実施するのは異例だ。北朝鮮の脅威が新たな段階に入ったことを踏まえた対応と言える。

米海軍は、原子力潜水艦「ミシガン」を韓国・釜山に入港させた。多数の巡航ミサイルの搭載が可能で、特殊部隊の作戦拠点としても利用できる。圧倒的に優勢な軍事力を示し、北朝鮮に挑発を自制するよう警告したのだろう。

米国は、対北朝鮮包囲網を狭めるための外交も展開している。

トランプ氏は、国連安全保障理事会メンバー国の大使らと会い、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対する「さらに強力な制裁」の準備を要請した。中国の習近平国家主席との電話会談でも、北朝鮮政策での協力を重ねて促した。

様々な安保理決議に基づく制裁の実効性を高めるには、北朝鮮を支えてきた中国が厳格に履行することが欠かせない。

北朝鮮の核問題を巡る6か国協議の日米韓首席代表が東京で、中国に大きな役割を果たすよう求めることで一致したのは当然だ。

万一の事態に備える方策を確認しておくことも大切である。

ミサイル発射情報が出た場合、屋外なら頑丈な建物や地下街などに、屋内なら窓のない部屋に移動する。政府はインターネットの「国民保護ポータルサイト」に、こうした注意を掲載している。周知徹底を図りたい。

[朝日新聞] 辺野古埋め立て強行 「対話なき強権」の果てに (2017年04月26日)

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米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古沿岸できのう、政府が護岸工事に着手した。

沖縄県や多くの県民の反対を押し切っての強行である。

従来の陸上工事や海上の浮き具設置と異なり、埋め立て予定地を囲む護岸を造るため、海に大量の岩石や土砂を投入する。このまま進めば一帯の原状回復は困難となる。辺野古移設は大きな節目を迎えた。

この問題が問うているのは、日本の民主主義と地方自治そのものである。

■原点は基地負担軽減

政府は安全保障上、米軍基地は必要だと強調する。これに対し、県は県民の安全・安心のため基地の削減を求める。

政府のいう公益と、地方の公益がぶつかった時、どう折り合いをつけるか。対話のなかで合意できる領域を探ることこそ政治の使命ではないか。

ところが安倍政権は、県との話し合いには一貫して後ろ向きだ。国と地方の異なる視点のなかで歩み寄りを探る政治の責任を放棄した。その帰結が今回の埋め立て強行にほかならない。

移設計画が浮上して21年。改めて原点を思い起こしたい。

太平洋戦争末期、沖縄は本土防衛の「捨て石」とされ、悲惨な地上戦を経験した。戦後も本土の米軍基地は減ったのに、沖縄では米軍の強権的な支配のなかで基地が広がっていく。

念願の本土復帰後も、基地があるがゆえの米軍による事故や犯罪は続く。積み重なった怒りのうえに1995年の米兵3人による女児暴行事件が起き、県民の憤りは頂点に達した。

この事件を契機に、沖縄に偏した基地負担を少しでも軽減しようと日米両政府が合意したのが、普天間返還である。

紆余(うよ)曲折を重ねるなかで政府と県は「使用期限は15年」「軍民共用」という条件で合意したはずだった。だがこれも県の意向を十分に踏まえぬまま、米国との関係を最優先する政府の手で覆されてしまう。

■強まる「軍事の島」

しかも移設計画には大型船舶用の岸壁や弾薬の積み込み施設など、普天間にない機能が加わっている。だから多くの県民が「負担軽減どころか新基地建設だ」と反発しているのだ。

最近も北朝鮮情勢の緊迫を受け、米軍は嘉手納基地にF15戦闘機などを並べ、戦闘態勢を誇示した。さらに「新基地」建設で軍事の島の色彩を強めることは、県民の負担増そのものだ。

他国軍の基地がこんなにも集中する地域が世界のどこにあるだろう。政府はいつまで沖縄に過度の負担を押しつけ、差別的な歴史を強いるのか。

だが安倍政権の対応は、けんもほろろだ。

前知事が埋め立てを承認する際の約束だった事前協議を県が求めても「協議は終了した」。県の規則にもとづく「岩礁破砕許可」の更新も必要ないと主張し、3月末に期限が切れており更新が必要だとする県と真っ向から対立する。

政府が前面に掲げるのは、翁長知事の埋め立て承認取り消し処分は違法だとする「司法の判断」だ。一方、県は名護市長選や県知事選、衆参両院選挙で反対派を相次いで当選させた「民意」を強調する。朝日新聞などの直近の県民意識調査では、65%が辺野古埋め立ては「妥当でない」とし、61%が移設に反対と答えた。

■本土の側も問われる

ことは沖縄だけの問題にとどまらない。

自らの地域のことは、自らの判断で考える。地域の自己決定権をできる限り尊重する――。その理念に沿って、地方自治法が1999年に大幅改正され、国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」へと転換したはずである。

それなのに、考えの違う自治体を政府が高圧的に扱えるとなれば、次はどの自治体が同様の扱いを受けてもおかしくない。

沖縄県の異議にかかわらず、政府が強硬姿勢をとり続ける背景に何があるのか。

本紙などの沖縄県民調査では、基地負担軽減について「安倍内閣は沖縄の意見を聞いている」が27%にとどまったのに対し、全国を対象にした調査では41%と差があらわれた。

沖縄の厳しい基地負担の歴史と現実に本土の国民の関心が薄いことが、政権への視線の違いに表れているように見える。

翁長知事は今回の工事の差し止め訴訟などの対抗策を検討している。政府と県の対立は再び法廷に持ち込まれそうだ。

現場の大浦湾はジュゴンやサンゴが生息し、世界でここでしか確認されていないカニなど新種も続々と報告されている。

翁長知事は語る。「国防のためだったら十和田湖や松島湾、琵琶湖を埋め立てるのか」

その問いを政府は真剣に受け止め、姿勢を正す必要がある。

沖縄の過重な基地負担に依存している本土の側もまた、同じ問いを突きつけられている。

[日経新聞] 国際収支の不均衡はいま大きな問題か (2017年04月26日)

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米国のトランプ政権は、米国の貿易赤字や国際収支の不均衡を問題視し、黒字国に対応を迫る姿勢を崩していない。

2国間交渉などで貿易収支を調整するのは誤った考え方だ。無理に変えようとすれば経済に副作用をもたらす。また、世界的にみても、国際収支の不均衡が経済や金融市場をかく乱する要因になっているとはいえない。

各国はこうした点について米政権に粘り強く説明し、政策が間違った方向に進まないようクギを刺していくことが重要だ。

ムニューシン米財務長官は先週末、国際通貨基金(IMF)に対して、加盟各国の為替相場や対外収支に対する監視を強め、具体的な不均衡是正策を提起するよう求めた。「過度な貿易不均衡は自由で公正な貿易システムの助けにならない」との認識による。

これに応じる形で、IMFの助言機関である国際通貨金融委員会(IMFC)は「過度な不均衡に対応するためIMFが各国別に政策アドバイスをすることを歓迎する」との文言を、共同声明に盛り込んだ。

とはいえ、米国の対外赤字は国全体の投資が貯蓄を上回っていることを映したもので、対米黒字国の「不公正貿易」が原因ではない。どうしても貿易赤字を減らしたいなら、財政赤字削減など経済全体の体質を変える必要がある。

歴史的に見ると、世界全体の国際収支の不均衡が特に大きいわけではない。

貿易収支に海外からの利子や配当の受け取りなどの所得収支も加えた経常収支で見ると、米国の赤字は2006年には国内総生産(GDP)比で6%近くあったが16年は2%台にとどまる。

一方、中国の経常黒字は最大時の9%台から1%台に低下。日本の黒字は3%台と比較的高めだが、所得収支の黒字が大宗を占め、貿易黒字は小さい。

その中で黒字拡大が目立つのは8%台のドイツだ。財政もゆとりのあるドイツは、内需拡大や賃金引き上げなどでユーロ圏経済の底上げに貢献することができる。

20カ国・地域(G20)の財務相やIMFがマクロ経済政策の協調のあり方について議論することは引き続き大切だ。だが、いま米国や世界にとって最も重要なのは不均衡是正ではなく、貿易の自由化や生産性を引き上げる構造改革などで成長力を高めることだろう。

[日経新聞] 廃炉の実績積み今後に生かせ (2017年04月26日)

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原子力規制委員会が原子炉5基の廃炉を認可した。東京電力福島第1原子力発電所の事故後に定めた新規制基準の下では初めて。今後、廃炉は年1、2基ずつ出る見通し。大量の廃炉に備えつつ経験を安全性の向上に生かしたい。

運転期間を原則40年とする新規制基準では、厳しい安全審査を通れば運転期間を1回に限り20年間延長できる。日本原子力産業協会のまとめでは、運転期間が35年以上におよぶ現役の原子炉は国内に7基あり、うち3基は60年までの延長が認められている。

老朽炉には機器・設備のかなりの部分を補修・交換したものもある。安全性と経済性の両面から、使い続けるべきかどうか、しっかり見極める必要がある。

廃炉が認められた5基から出る放射性廃棄物は合計約2万7千トンと推定される。放射性物質による汚染が少ない設備や機器については、除染・解体して再利用する手法や技術が確立している。ただ、作業が一時期に集中すると人手や機材の不足を招く恐れがある。

1基につき20?30年かかる廃炉をいかに無理なく進めるか。今から業界全体で調整し計画を立てておけば、効率的に作業ができコスト圧縮効果も期待できる。

高濃度の汚染物質の扱いは難しい。地下70メートルよりも深いところに埋めると規定されているが、具体的な方法や処分地は未定だ。国や自治体、電力事業者は協力して早く決めなければならない。

廃炉で得られた経験や知見は原子炉の安全性向上に生かせるはずだ。たとえば、長いあいだ放射線を浴び続けた材料はもろくなる。その度合いは計算式で推定しているが、解体時に材料の状態を測定しデータベース化すれば、より正確な判定に使える。

健全な原子炉と事故炉では条件が異なるが、福島第1原発の廃炉に役立つデータが得られる可能性もある。廃炉の担い手を実地での教育・訓練を通して育成できれば、廃炉ビジネスの国際競争力を支える大きな力にもなろう。

[毎日新聞] 辺野古の埋め立て始まる 「対立の海」にしたいのか (2017年04月26日)

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後戻りできない隘路(あいろ)に迷い込むことにならないか。

沖縄県名護市辺野古の海を埋め立てる護岸工事が始まった。埋め立て海域を囲う外枠が大量の石材で造られる。政府は今年度中にも護岸を完成させ、その内側への土砂投入を始める方針だ。埋め立て面積は約160ヘクタールに及び、工事が進めば元の環境に戻すのは難しくなる。

菅義偉官房長官は「多くの人々が望んできた普天間飛行場の全面返還を実現する確かな一歩だ」と述べた。

だが、普天間返還を望む人々が同時に県内移設を望んでいるわけではない。片面だけを強調するのは適当ではない。

日米両政府が米軍普天間飛行場の返還に合意した1996年4月から21年がたつ。これまで長い歳月を費やしてきたのは、ひとえに地元の理解を得るためではなかったのか。

沖縄では今年に入って1月の宮古島、2月の浦添、今月23日のうるまと、安倍政権が支援する候補と翁長雄志知事系の候補が戦う市長選が続き、いずれも政権側が制している。

現在、県内11市のうち9市長は政権側とされ、翁長氏側は普天間移設先の名護と県庁所在地・那覇の2市長のみ。政権側としては、来年に予定される名護市長選と県知事選で勝利すれば、地元の理解は得られたことになると考えているようだ。

選挙は民意を問う重要な機会だが、今年の3市長選は普天間問題の直接の地元で行われたものではない。沖縄ではこの21年間、名護市の住民投票(97年)や各種の地方選挙で再三にわたり普天間問題が民意の分断を招いてきた。

翁長氏は「護岸工事を強行したのは許し難い。環境保全の重要性を無視した暴挙だ」と政府批判を強めている。県による埋め立て承認の取り消し処分は最高裁で違法とされたが、承認の撤回や工事の差し止め訴訟も検討している。

新たな基地建設が返還条件では、日米同盟に伴う基地負担を沖縄に押しつける構図は変わらない。政府は沖縄全体の負担軽減を進めることで理解を得ようとしてきた。だが、県側と対立したままの埋め立て着工は理解を遠ざけることになる。

辺野古を「対立の海」として固定化させてはならない。

[毎日新聞] 今村復興相、暴言で辞任へ 内閣の緩みはすさまじい (2017年04月26日)

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かけがえのない肉親を亡くした人たちはどんな思いで聞いただろう。

今村雅弘復興相が東日本大震災について「まだ東北だったからよかった。これが首都圏に近かったりすると莫大(ばくだい)な被害があった」と発言した。与野党にすぐ批判が広がり、今村氏は辞任する意向を固めた。

復興行政の担い手として極めて不適切な発言で、辞任は当然だ。閣僚らに緩みを示す言動が相次いでいる異常な事態を安倍晋三首相は重く受け止めるべきだ。

今村氏は自らが所属する自民党二階派パーティーに講師として出席し、発言は東日本大震災の社会資本などの被害額を「25兆円」と指摘した際に飛び出した。震災の深刻な被害を金額の多寡でしか捉えられない無神経さを示したものだ。

同じ場で後からあいさつした首相がすぐさま「東北の方々を傷つける極めて不適切な発言があった」と陳謝するほどだった。復興行政全体への信頼を傷つける取り返しのつかない発言である。

今村氏は今月4日、東京電力福島第1原発事故で自主避難した人たちの帰還問題について「本人の責任、判断だ」などと語り撤回、陳謝したばかりだ。記者会見で問い続ける記者に「出て行きなさい」「うるさい」と激高した姿は異様だった。

ふたつの発言に共通して感じられるのは被災者や地域に寄り添おうとする気持ちの欠如である。重責にふさわしくない人材を起用した首相人事の責任は重い。

それにしてもこのところ、安倍内閣では、閣僚や政務官らの放言や醜聞が目立つ。

山本幸三地方創生担当相は観光振興をめぐり「一番がんなのは学芸員。一掃しないとだめだ」などと発言して批判を招き、撤回した。中川俊直・元経済産業政務官は女性問題をめぐる週刊誌報道で辞任、自民党離党に追い込まれた。

内閣全体の緊張感が欠けていると言われても仕方がない。

国会で自民党の「1強」状態が続く中では、おごりや慢心が生じやすい。安易な閣僚人事や若手議員の質の低下など、さまざまな要因が政治を劣化させているのではないか。首相は政権運営を謙虚に点検する必要がある。

[東京新聞] 北の軍事的脅威 中国、実効性ある措置を (2017年04月26日)

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北朝鮮の核実験の可能性など軍事的脅威が高まっている。北朝鮮に一定の影響力を持つ中国は、北への石油供給削減など軍事挑発に歯止めをかける実効性ある措置を講じてほしい。

北朝鮮の軍事的脅威について中国の基本姿勢は「対話を通じた平和的解決」である。程永華駐日大使は四月の記者会見で「今まで一番成果を出したのは六カ国協議である」と強調したが、対話路線のみによる朝鮮半島非核化が手詰まりであるのは明らかだ。

米中首脳会談では北の核ミサイル開発について「非常に深刻な段階」との認識を共有した。最近の米中首脳電話会談では、習近平国家主席が「国連安全保障理事会の制裁決議に違反する行為には断固反対だ」と述べたという。

北の軍事的脅威を解消するためにも、習氏の言葉通り中国は安保理の決議に基づき効果的な制裁を強めるべきである。

北朝鮮の重要な外貨獲得源である石炭輸出について、中国は二月に制裁決議に基づき、年末まで輸入を停止すると決めた。これまで中国による輸入が制裁の抜け道になってきたとの批判がある。誠実に制裁決議を履行してほしい。

それでも北朝鮮は軍事的脅威をエスカレートさせている。中国は北朝鮮軍の活動を支える石油輸出削減にも踏み込むべきだろう。

人民日報系の環球時報は人道面から石油全面禁輸には反対しながらも「石油供給の大幅減少は措置の一つ」と主張。北の工業などが打撃を受けても「核兵器開発を堅持する代償だ」と報じた。

この論調が中国政府の意見を代弁するかどうか不明だが、中国が石油供給を抑えれば大きな圧力になるのは間違いない。民生品とされる中国からの輸出品の軍事転用に目を光らせるのも肝要だ。

中国が最近、朝鮮半島有事を想定し中朝国境で警戒レベルを強めているとの報道もある。制裁強化は圧力と対話で軍事暴発を防ぐためであり、北朝鮮に疑心暗鬼を生じさせるのは得策ではない。

朝鮮戦争を共に戦い「血で固められた友誼(ゆうぎ)」とうたわれた中朝の絆は弱まっている。

北朝鮮の実質的ナンバー2とされ中国との関係が深かった張成沢氏の処刑以降、関係はより疎遠になっている。

中国には北朝鮮との外交関係再構築にも努力してほしい。非核化に向け北朝鮮を説得し行動を起こさせる役割を果たしてこそ、中国の国際的信頼も高まるのだ。
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