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[産経新聞] 【主張】相模原殺傷検証 犯罪防止の視点足りない (2016年09月17日)

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相模原市の障害者施設で入居者らが元施設職員の男に次々刺され、19人が死亡した事件で、厚生労働省の検討チームが中間報告をまとめた。

男は事件前、他人を害する恐れがあるとして措置入院したが、医師の判断で退院後に凶行に及んだ。中間報告は病院と市の対応について「不十分な点が認められた」とし、退院後の男の生活環境について議論が足りず、市も支援を検討しなかったことなどを問題視した。

措置入院制度の見直しについても「必要不可欠」と結論づけている。もっともな指摘だが、それだけで犯行は防げたか。医療現場と自治体任せで治安を守ることはできない。司法の関与も含め、幅広く再発防止策を検討すべきだ。

男は事件前、施設襲撃を予告する手紙を衆院議長公邸に届けた。内容を把握した神奈川県警が市に通報し、精神保健指定医の診断を経て措置入院は決定した。

男は入院時も「障害者を抹殺する」などの言動を繰り返し、大麻の陽性反応も認められた。だが指定医は入院12日後に「他害の恐れはなくなった」と判断し、男は退院した。大麻の陽性反応を含め、警察への連絡はなかった。

指定医の退院の判断について中間報告は「標準的」と評価した。制度上の医療判断としてはそうなのだろう。

現実には退院後、男は予告通りの惨劇を実行した。そこに犯罪防止、治安維持の視点はみられない。また医療や福祉の現場にこれを求めるのも無理がある。

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厚労省は、自治体が退院後の支援に関わる制度を作る方針だが、対象者が拒否すれば、警察の介在を抜きに動向を把握することは難しい。司法の関与による何らかの強制力が必要である。

欧米の多くでは裁判所が犯罪予防的に強制入院を命じることができる「治療処分」が制度化されている。同様の制度は日本でも検討されたが、戦前の治安維持法に規定された予防拘禁と混同する反対論などで立ち消えとなった。

平成13年には、大阪教育大付属池田小学校で、措置入院を終えた男が児童8人を刺殺する事件があった。この時も「治療処分」導入の議論はあったが、放置されたまま相模原の事件は起きた。

また凶悪事件が起きるまで何もしないのであれば、政治と立法の不作為であるといえる。

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